外はまだ明け方。


街は青く染まって、夜と朝の境に居る。





「…くそ」





片手をポケットに突っ込みながら、久々に見た昔の夢と、隣に居た女に吐き気を催していた。




提げた鞄には、多額の金が入った封筒。



女って言うのは、容易く騙されて。


その力の下に支配されて。



それでも幸せなんだろうか。




愛ってなんだよ。


好きってどんなんだよ。



そんな感情、要らねーよ。


俺にはわからない。


知ろうとも思わないし、知りたくもない。



「お、零じゃん。」



角を曲がったところで、馴染みの声が聞こえた。



顔を上げると、崇が煙草を吹かしながら、向こうから歩いてくるところで。



にやついてこちらを見ている。



「…よ。」



短く返す。




「今度、ルナでDJやるんだって?いやー、何年ぶり?」




崇が懐かしむように訊ねる。




「さぁ…暫くこっち来てなかったからな…どのくらいだろ。」




曖昧に答えると、崇がバンバンと背中を叩いた。




「売れっ子は大変だねぇ!ルナにはお前のファン居すぎて困ってるんだぜ。葉月も待ちわびてるよ、今度のイベント。」




「あ、そう。てか、痛い」



俺が顔をしかめると、崇がパッと手を放す。



「あ、わり。」



馬鹿力。