言葉を話さない俺は、言われることを首を縦に振るか横に振るかで済ませた。




人の輪から離れて、いつも、空を見ていた。






あれは、いつのことだったかな。



施設に入って直ぐのことだったのかな。



それとも、少し経ってからのことだったか。




いつもみたいに、施設のグランドにあったジャングルジムのてっぺんに登って空を眺めていると。




『そこに、いってもいいかな?』





下から声が掛かった。



見ると、施設に来たばかりの頃、初めて話した男が、俺を見上げていた。



男の名前は中堀といった。



大柄な体つきとは反して、穏やかな物腰と声で人に接する。



俺の金色の髪の毛は目立つから、周囲の子供が俺を遠巻きにし、いじめっ子が引っ張ったりからかったりしても、中堀は何も言わずに止めるだけで、正直俺はこの中堀が好きじゃなかった。



だけど、決まって、必ず最後に優しく言うんだよ。




『とても綺麗な色だね』って。



嘘だろって、思うんだ。



だって、母親の交際相手はどれも俺の髪の毛を至極嫌ってた。



母親自身も。



だから、俺も嫌いなんだよ。この色が。



だから、キライなんだよ、あんたも。