《ん。なら良かった。電話したのは、乃々香にお願いしたいことがあって、なんだけど》
気のせいかな。
うん。そう思おう。
私は気を取り直そうとわざと明るく返事をする。
「あ、はいっ。これからですか?それとも、明日ですか?」
私は、今日これからの方を強くおススメします!と心の声を付け足した。
《いや…》
それなのに、予想もしていない反応が返ってくる。
《この土曜日。午後7時に空港に見送りだけ、きてくれればいい。志織とは前日から過ごすから、出発ロビーに一人で来てもらうことになっちゃうんだけど。》
「―え?」
それって…つまり。。
《それで、最後だから》
携帯が、震えてる。
「それで……最後?」
違う、自分の手だ。
《そう、契約終了。お疲れ様。》
頭が、中堀さんの言葉を理解できないでいる。
「そ、その、えと…間に、何か、、、ないですか?用とか。。」
自分自身でもよくわからないことを口走る。
でも、考える余裕がない。
《特に、ないね。》
「そう、ですか…」
中堀さんの余りにさらっとした物言いも、右から左へと流れる。
《あ、そうだ。帽子、あげるから。》
思い出したように、中堀さんが言い添えた。


