自分のドキドキする胸に、手を当てて溜め息を吐くと同時に携帯が震えた。
「わ…」
慌てて、携帯の在り処を探るが、どうもはっきりしない。
どこだっけ。
バッグの中をひっかき回して、やっと内ポケットに入り込んでいるのを見つけた。
表示された名前は―
ドキっとした。
中堀さん。
いや、実際は佐藤で登録されているから、中堀とは出ないんだけどね。
まぁ、そんなことはどうでもいいわけで。
「はいはいっ!」
ドキドキと嬉しさの余り、笑いながら電話に出る私。
あー、中堀さんの声を聞けるというだけで、こんなにもテンション上がるなんて。
自分に正直というのは、なんて良い事なんだろう。
身体と心はやっぱり切り裂かれちゃ駄目なのね。
《こんばんは》
あれ。
いつもと、少し違う。
「…こんばんは」
それが何かわからずに、とりあえず挨拶を返した。
《昨日、ちゃんと家に帰れた?》
「あ、、はい。すみません…ご迷惑をお掛けするばかりで…」
なんだろう。
やけに静かな気がする。
いつものからかいを含んだような声じゃなくて。
淡々とした口調だ。


