こうして無防備に眠っているのを見ると、悪魔みたいに意地悪く笑う中堀さんは想像できない。
「…長い睫毛」
少し、分けてくれないかな。
そしたらちょうど良い気がするのだけど。
―あ。
きれい。
太陽の光が透けて、色素の薄い中堀さんの髪の毛が輝いて見える。
『俺半分は日本人じゃないんだよ。』
思わず、手を伸ばして、そっと指先で触れた。
髪はすぐにサラリと揺れる。
少し寂しげだった、あの笑顔が、頭から離れてくれない。
瞳の色は薄い茶色。
彼は外人ぽいかと訊かれれば、そうじゃない。
だから、脱色して染めたのかと思ってた。
でも異様に美しいその色の意味を。
私は知ってしまった。
その裏に、何が隠されているんだろう。
何を抱えているんだろう。
知りたいな。
と、突然。
「ひっ」
中堀さんの前髪を掬っていた手が、大きな手にがしりと掴まれ、私は悲鳴を上げた。
冷たくて、細く長い手。
「人の寝込み襲わないでくれる?」
その持ち主が、お目覚めだ。


