不機嫌なアルバトロス


「何。」


「ひっ」



まるでこうする私を予想していたかのように、ドアの前には腕組みをした中堀さんが立っていた。



「えっと、、、その…あの…」



中々言葉を紡げない私に、中堀さんが首を傾げる。



「あ、あ、あの。。。えっと…」



ええい、ここは発熱に便乗して言ってしまえ!



一度ぎゅっと目を瞑って、開いて、意を決した私は口を開く。



「も、もう少しだけ…」



少しだけ、わがままを。


元気になったら、ちゃんと離れるから。


熱が出て弱っている今だけは、ちょっとだけ、この間だけ、わがままを言ってもいいだろうか。



「…そばにいてくれませんか?」




中堀さんは目を見開いて、少し驚いた顔をしたけど。


直ぐに優しく、「いいよ」と笑う。


私にしてみれば、予想外の反応で。


なんだか嬉しくなってしまう。


にやけてしまう口元を必死に隠しながら、いそいそと寝室へ戻った。



中堀さんはダウンライトだけ点けてくれて、ぽつんと置かれている黒の椅子に座り、いつかのようにベットに横になる私を見下ろす。




「これでいい?」




「…はい」




こんなことばっかりやってるから、自分は子供だと言われちゃうんだろうな、と頭の隅で思いながらも。



子供でも、いっか、なんて。



少しだけ得した気分になった。