じゃ、何か?


全部ぜんぶゼンブ!


目の前のこの金髪の思惑通りに、事は動いて行っているワケ?


志織さんも、私も、こんなに心揺さぶられながら、自分の思う通りに動いていると信じながら、実は彼の手の上で転がされているっていうことでしょう?




「…うん、非道いね?」




にっこりと笑う彼に、私は掴みかかる。




「どうして?!」




「…なにが?」



私の手を払うこともせず、余裕の表情で私を見つめる中堀さん。



「どうして…そんなこと、してるんですか?な、中堀さんは…、別に困ってるわけじゃないじゃないですか…仕事、自分の好きな仕事、あるじゃないですかっ、光れる場所が、あるじゃないですかっ」



私みたいに、毎日誰でも出来るような仕事をしているわけじゃない。


私みたいに、その他大勢の中の一人で、名前を覚えてもらえないわけじゃない。


必要とされている場所が、あるのに。


「……櫻田花音?」



ふいにフルネームで呼ばれて、ドキッとした。



正面から私を見つめる彼の目はもう笑っていなくて。



中堀さんのシャツを掴む私の手をやんわりと外させる。



「俺の髪の色は、黒と金、どちらが本当の色だと思う?」



……は?



何を言い出すかと思えば、髪の色の話?



私は目がテンになる。



だけど、目の前の彼は、どこか寂しげに見える。


ふざけているわけじゃ、なさそうだ。