私の言葉を待っていたかのように、彼は視線を壁時計に向ける。



「…?」



私も同じようにそちらに目を向ける。



「もう、とっくに12時過ぎてるよ」



時刻は只今0時45分。会社に取りに行くには遅すぎる。




「さすがに俺も、あんたの会社まで行ってロッカー漁れないからなぁ。仕方ないよねぇ」



ケラケラ笑う中堀さん。


血の気の引く音が聞こえる気がする私。


要は、あのまま車で爆睡した私を家に送ろうにも鍵がなく。多分起こしたであろうが、起きず。



私がここのベッドに寝かされていたことの意味を、ようやく悟る。




「ごめん…なさい…」



落ち込みすぎて俯いた顔を、上げることもできず、謝った。


隣のソファが少し沈んで、再び中堀さんが座ったのだと気付く。



「まぁ、まさか徒歩とは思わなかったけど、ここまで来させたのは俺にも責任があるし、ね。」



いつになく穏やかな口調で、中堀さんは言った。



「……」


しかし、中堀さんは穏やかでも、私は心中穏やかではない。


だって、こんなに迷惑掛けていたのに、あんなこと喚いちゃって…穴があったら入りたいとはこの事だ。




「そこまで生活乱してるとは、思わなかったけどね。ま、そーか。志織が会社まで行ったんだもんね?」



そうだった。


中堀さんの言葉に私は自分が言うべき言葉を思い出す。