ペットボトルの蓋を開ける時、ちらっと中堀さんの横顔を見る。


彼はテレビのリモコンをいじりながら、ミネラルウォーターを飲んでいる。



だめだな。


まだ、ドキドキする。





「…聞いてる?」




急にこちらをジロっと見るもんだから、慌ててペットボトルに口を付けた。



そ、そうだった。



こきゅ、と喉を鳴らしながら冷たい水を流し込んだことで、言おうとしていたことを思い出した。




「あのっ、すみませんでした。家に、か、帰ります、私っ」


「―は?」


「だから、そのっ、家に―」


「お前アホか?」


「っ」


ひ、ひどいっ。





「あんたさぁ、もしかして…会社から中央公園まで徒歩できたりした?」



え。


な、なんでバレてるんだ…



何も言わないのを肯定と見なしたのか、中堀さんは盛大に溜め息を吐く。



「ほんっと、馬鹿なんだね」



ムカつく!



私は俯いた顔を、キッと睨むようにして中堀さんに向けた。



「さっきから!人のことを馬鹿とか阿呆とか言わないでくださいよっ!どーせ私は馬鹿で阿呆ですよ!その上アホウドリとか言われちゃってますよ!」



熱が、自分の心中の怒りも容易に外に出しやすくしているらしい。


普段、誰にも言うことのない苛々が、こんな場面で出てきてしまうとは。