バタン、と閉まるドアの音がする。



部屋に、残る、残り香。



甘い麝香。



「なんで…知ってたんだろ…」



今起きたことを考えるだけの、思考力なんて私には残っていなくて。



ベットに横たわりながら、横に置いていかれたビニール袋に入ったペットボトルを見た。



それから。



「…忘れ物?…わざと?」



キスした時に、外れた帽子。



それを持ち上げて、自分の顔を隠すようにかぶせた。



真っ暗。



何を考えてるかわからない、中堀さんみたいだ。



ぐったりしていた私は、そんなことを考えながら、布団をかけずに眠りに落ちた。