「二週間は、俺のものだって」
熱い吐息がかかるっ。
うううう。
いつの間にか私は目を瞑り、唇をぎゅぅっと真一文字に結んで全身に力を入れていた。
「あと10日は他の奴のモノになっちゃ駄目だよ」
「んっんー!」
一気に唇を塞がれて、パニック度マックスな私はバタバタと身を捩るも、意味を成さない。
頭の中は、ハテナが雨の様に降り注ぎ、埋め尽くされている。
どうして?なんで?
熱い、暑い、熱い。
涙が、ひとつ、またひとつ、落ちる。
息が―
持たない。
深く、奥深く。
何度も何度も繰り返されるごとに。
絶対に時間は過ぎているはずなんだけど。
私には時が止まったかのように思えた。
「はっ」
暫くして突然入り込んだ酸素を、私は必然的に求めた。
「消毒。もう、クラブにはこないでね」
そう言って、中堀さんは身体を起こして私からも放れた。
力が抜け切った私は、ただただ、妖艶に笑う彼を見つめるしかできない。
「あ、そーだ」
ガサッという音と一緒に彼のポケットから出てきたのは、清涼飲料水。
「風邪、お大事にね」
また、連絡するからと言って、何事もなかったように口笛を吹き、彼は部屋を出て行く。
私は、ぼんやりとその後ろ姿を目で追う。
火照った身体とは反対に、そばに置かれた冷たいペットボトルが私の頬にひんやりとしみた。


