「…なんであそこに居たの?」



気のせいか、冷やりとした声で中堀さんが訊ねる。


その瞬間、するりと彼の細い指からリボンが落ちて私の首にかかった。



昨夜の出来事がおぼろげに思い出されて、ほてった顔に更に熱を持たせる。



このリボンは、クラブの入り口で左手首につけられたやつだ。



更に言うならばタカに引っ張られた、あの、リボンだ。





「そ、それは…あ、貴方に、、用が、、あって」




しどろもどろになりながら、かろうじて私は答える。


「あそこにいけば、、会えるかとおもっ」



言いながら私は身体を起こそうと右肘をついてお腹に力を込める―



「―て?!」



何故だか私はベットにもう一度押し付けられた。



「……なっ、なにするっんですかっ」



突然のことに驚きながらも、私の手首を掴んでベットに縫いとめた張本人に訴える。



「……タカが……あんたのこと気に入ったんだって」



その名前を、中堀さんの口から出されて、心臓が止まるかと思った。




「っ放して…ください…」




私の願いとは反対に、捉まれた手首に力が籠められたのが伝わった。



少し、痛いくらいに。




「あんたは?」



少しの抵抗も虚しく、手首はびくとも動かない。



「あんたは、タカのこと、どう思ってんの?」




もしかしたら。


あの瞬間、私は中堀さんを見たけれど。


中堀さんからは私のことが見えてなかったっていう可能性はあると思っていた。


でも。


リボンといい、この質問といい、中堀さんは確実にあの瞬間を見ていたんだと悟る。


穴があったら入りたい。


同時に上がり続ける熱に浮かされて、目に涙がうっすら溜まる。