恐怖の瞬間を私はあわわわと口に手をあてつつ待った。


カチャ


軽い音と共にドアは確実に開き、




「……手間のかかる女だな」




冷たい風を引き連れて、いまだ怖い顔をしている中堀さんが中に入る。



バタン



ドアが閉まる音が、ただでさえ早い私の鼓動を加速させた。




「…なんでチェーン…」



どうして開くの。


防犯なのに。


開いちゃ駄目じゃん。


こんな展開。


今の私には立ち向かう余力がない。



グレーのパーカーに黒のジャケット。


うちの狭い玄関に佇む彼は、外で見るよりもずっと背が高く感じる。


被っている黒いキャップが、彼の金髪を映えさせた。



これはこれで、かっこよすぎる…




……



じゃなくて!そうじゃなくて!!



熱のせいかまともな思考が出来ずに居る自分に、ふるふると首を振る。



パジャマにカーディガンの自分。



目の前には不法侵入者。



まずい。


非常にまずい状況。




「……すっ!!」



追い詰められた私は、素っ頓狂な声を上げた。




「……?」



屈んで靴を脱いでいた彼は、不可解な表情をしてこっちを見る。