あーどうしよう…すっぴんだ。
困った。
熱は完璧あるし。
一人で完全に慌てた。
あ、そーだ。
熱があるので帰ってくださいと言う事にしよう。
自分を奮い立たせるようによしっと頷く。
私はキッチンの近くまで戻ってインターホンの受話器を取る。
すぅっと息を吸い込んで―
「…あのっ『あけろ』」
「………」
いや、その…違うでしょ、色々。
『10秒以内』
「………」
『10』
『9』
人は何故、制限時間を設けられると、途端に急がなきゃいけない気分になるのでしょうか。
おろおろしながらも、私は更に慌てて玄関に戻りチェーンをかけたまま鍵を開けた。
「なんだ、これは」
夜しか会ったことのない金髪の彼が、当たり前だけどすぐ目の前に居た。
不機嫌そうに顔をしかめて、チェーンを見つめながら。
「えっと…防犯です…」
至極まともだと思う私の答えに、中堀さんは呆れたように宙を仰ぐ。
そして舌打ちと共に玄関のドアが勢い良く閉められた。
「きゃっ」
突然のことにびっくりして、思わずドアから手を放す。
少しの間、ドアはガチャガチャと閉じたり空けたりを繰り返している。
何をやってるんだろう?
私は一人、内側で首を傾げて事の成り行きを見守っていた。
すると。
ガチャリ
「…嘘」
ドアがもう一度閉まった瞬間、かけてあったチェーンがぽろりと外れた。
大変なことになってしまった、と私は居間の方へとじりじり後退し始める。