「ここじゃ、零(レイ)ってみんな呼んでる。それかゼロだね」
首を傾げそうになる私の気持ちを察して、タカが答えてくれる。
「零…、あの、零、さんはいつ来るんですか?」
「ふっ…」
私は至極真面目に訊ねているのだが、何故かタカは笑う。
「ちょ、え、なんで笑う…「どうぞ」」
私が抗議しようとした瞬間、ちょうどトーマがグラスに注がれたオレンジ色の液体を私の前に置いた。
「…零ならもうとっくに来てるよ」
カクテルに釘付けになっている私に、トーマはにこりと微笑んだ。
「…え?」
私は馬鹿みたいに口をあんぐり開けて、カクテルからトーマに目を向けた。
どこに?
慌てて辺りをきょろきょろ見回してみるが、それらしきヒトはいない。
あんな金髪なんだから、目立つかと思いきや。
クラブには色んな髪が沢山あるから、わかんない。
でも。
あそこまでレベルの高い人間は、滅多に居ないんだけどな。
って、また私何を考えてんだか。
「ヒント、あげよっか?」
一人で軽く落ち込んでいると、タカが意地悪く笑った。


