不機嫌なアルバトロス

「友達なら…」



私の隣に座ったタカが、ホールの中心部を指差した。


げ!


憲子が真ん中で踊っている。



「思わず動きたくなっちゃったみたいよ?」



唖然としている私を横目に、タカはけらけら笑った。



「トーマ、この子にとりあえずスプモーニ出してやってよ。軽くつまむものもね」



「おっけ。っていうかこないだの子でしょ?何しにここ来たの?復讐?」



「なーんか知らないけど、そういうんじゃないみたいなんだよな。しかも零の奴、実名教えちゃってんの」



「マジ?大丈夫なのかよ」



男二人の会話を聞き取るため、私は耳に全神経を集中させた。



「マジで、アイツ、何考えてんのかわかんねー」



「だな。」



タカの言葉に70点、もとい、トーマは頷きながらシェーカーを振るう。


残念。


今ので二人の会話は終了してしまったらしい。


何が何だかわかんなかった。




「あの、、それで、、中堀さんは…」



一体いつ来るのか、訊ねようと口を開くと、




「シッ」



タカが人差し指を自分の唇に当てたので、咄嗟に噤(つぐ)む。




「その名前、禁句。」




タカはそう言って、にっと笑った。