不機嫌なアルバトロス

入り口のおにーさんの言葉に、タカも頷く。



「だよな」



おにーさんはこないだみたいにリボンをくるくると左手首に巻いてくれる。



「あの、お金は?」



タカが掴んだ右手首を離してくれずに、どんどん中に歩いていこうとするので思わず声を掛けた。



「あぁ、今日はいいよ。俺の奢りっつうことで」



人ごみを掻き分けて、こちらを振り返ることなくタカが言う。


あんまりよく聞こえなかったけど、多分大丈夫ってことなんだろう。



「まぁ、ここでとりあえず飲み物でも頼みなよ。」



前来た時と同じ、カウンターの席に着くと、やっとタカが手を放した。



「あ、ありがと…」



「あれ?見覚えのある子だね?」



タカにお礼を言うか言わないかで、バーテンダーの70点が私に気づく。



「先日はっ、どうも…あっ、そういえば憲子っ」



慌てて後ろを振り向くと、憲子が居ない。