「ぶふっ」


そのやりとりを見ていたタカが噴き出す。



「くくっ…」



なんか、悔しい。


この軽い男に笑われてるのが無性に腹立つ。





「あの…」




だけど、私はさっきから気になっていることをタカに訊きたい。




「…くくっ…な、何?」




ムカつく…

いやいや、抑えろ、花音。





「中堀さんが有名って、、どういうことですか?忙しいって…?」




「んー、、、それはまぁ、俺の口からはいえないなぁ。とりあえず、入ったら?そしたらわかるかもよ?」



タカは涙を拭うと、今度は悪戯っぽく笑った。



「え」



それってどういう意味なんだろう?



「さ、いこー!」



「あ、え、ちょっ」




がしりと手首を掴まれ、私はずるずる引き摺られる。



「の、憲子」



問いかけるような目で憲子を見つめると、



「全く。ほんっと手のかかる」



そう言って溜め息を吐きつつも、付いてきてくれる。



躊躇わずにずんずん進んでいったタカは、クラブの前で立ち止まることなく扉を開けた。



響いてくる重低音。


直ぐに人々の熱気が感じられる。





「お、タカ。今日はちょっと早いじゃん?」



こないだ私にクラブの説明をちょこっとしてくれた入り口のおにーさんが、珍しいものを見たかのように肩眉を上げる。




「ん、まーね。」




「しかも女連れ。益々怪しいな」



「そんなんじゃねぇよ。零(レイ)に用があんだってよ」



「え、ゼロに?ファン?残念だけど多分、朝3時まで身体空かねぇよ」