本名、、だったんだ…



「…ちょっと、花音。何ニヤけてんのよ、気持ち悪い」



憲子が怪訝な顔して言うが、どうしたって抑えられない。


いや、これでも抑えてるのだ。必死に。


だけど、、、



中堀さんって言う名前は、正しかったんだなぁ。



本当の彼だったんだなぁ。


信じてよかったんだなぁ。


彼の本当の名前を、私は呼べるんだなぁ。


そんなふわふわした思いが、後から後から、じわじわと感動になって私に押し寄せてくるもんだから。




「伝えたいことって…。うーん。でもアイツに会えるかなぁ。」



私達が中堀さんの被害者ってワケではないことに(いや本当は被害者の方だと思うけど)安心したのか、タカは少し緊張を解いて呟いた。


「それってどういうこと?」



浮かれている私を余所に、憲子がタカに訊ねる。



「いやぁ…、アイツ、アレでも一応有名人だからさ…」



言葉を濁しながら、タカは腕時計に目をやった。



「この時間だと、アオはちょっと忙しいかもよ?君ら明日仕事でしょ?こないだみたいに夜遅くまでは残れないだろうし…」



「えー、会えないの?ちょっと花音、約束してたんじゃなかったの?」



タカの言葉の途中で、憲子が私を問い質す。



えー、と。




「…スミマセン、行き当たりばったりです…」




私の言葉に、憲子が大きく溜め息を吐いた。