「あんたって人間は…話には聞いてたけどこんな軽々しくて空に浮かんじゃいそうな男に付いて行こうとしたの!?」



「…スミマセン」



私が謝りつつ、そぉっと憲子の後ろにいるタカを見ると、彼は目を丸くして自分のひどい言われように驚いていた。



「余所見しないっ!」


「はぃぃ…っ」


「ホントに馬鹿なんだからっ」


「ごめんなさぃ…」



いい歳して、道路っぱたで怒られている私って一体…


小さくなりつつ、自分を哀れんだ。



「まぁまぁ、そんな怒んなくたっていいじゃんなぁ?ところで、今日クラブ来るつもりだったの?」



立ち直りも空気のように軽いタカは私達の間に飄々と割り込んでくる。

「あ、はい。まぁ、その…なんというか…あの…」



「中堀サンっていうヒトに話があって、会いに来たのよ。」



ぐずぐずしている私の代わりに、憲子が答える。



「え。アイツもしかして、本名教えたの?マジで?」



タカが驚いたように口に手を当てた。



「それで?アイツになんかされた?仕返し?逆襲?逆恨み?何しにここに来たの?」



タカの顔色が明らかに変わった。



さっきまでちゃらんぽらんだったのに、どこか焦っているような感じ。



「…いや、その、ちょっと伝えたいことがありまして…」



私達は彼が詐欺師だということが知っているので、タカが何を予想しているのかが分かる。


でもそんなことよりも。




『本名教えたの?』



さっきのタカの言葉に舞い上がってしまっている自分が居る。