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「…なんか、ちょっと今日の服装かわいくない?」



ぎくっ



二人で上がって、更衣室で着替えていると憲子の視線がじーっと私に向けられているのがわかる。



「そう?最近よく着てるよ、コレ。憲子と一緒に上がるの久々だからじゃない?」



動揺してバクバクする心臓の音が聞こえているのではないだろうか。


そう思うが、私は平静を装って答える。



「ふーん…」



絶対納得していないが、憲子はそれ以上追及してはこなかった。



「ちょっとご飯食べてから行く?」




クラブの時間に合わせてお互い残業をして、時計の針は21時半を指している。


クラブにはこないだと同じくらいの22時過ぎた辺りで行くと憲子には伝えていたので、それまで私達は軽く飲むことにした。



「あ、そうだ。こないださ、どっか良いバーないかなって思ってたんだよね。」



「今さ、バーでもノンアルコールカクテル出す所とかあるじゃん?」



「明日も仕事だもんねぇ。飲みすぎてっていうのは嫌よね。」



そんなことを話しながら、クラブの近くの店を物色する。



あの夜と同じ光景に、少しドキドキする。


今更になって、クラブの名が[ Notte di Luna ] (ノッテ ディ ルーナ)ということを確認。



「あ、そこなんかいいんじゃん?立ち飲みバー。近いし」



憲子が指差した場所を振り返ると。



「やっぱり。カノンちゃんだ」



あの夜知り合った、85点のタカが、数メートル先で立ち止まってこちらを見ていた。