不機嫌なアルバトロス

あの男が言うことが正しければ、志織さんは騙された後でも、信じておばあちゃんになるまで独り身で彼の帰りを待つのだろう。


不憫。

ひどすぎる。

こんな良い人なのに。


完璧なお姫様。


こんな女性(ひと)でも、あの人には手が届かないと言うのなら。


私なんて以ての外というのは当然だろう。



「さ、ここでいいかしら?」



志織さんが立ち止まったのは、駅から近い落ち着いたカフェ。


私も仕事帰りにたまにここでお茶することがある。



「はい」



返事をすると、志織さんは頷いて店内に入った。


私もそれに倣う。