「少し、お時間いただけるかしら…?」 逃げるわけにはいかない。 だって、ここで逃げたら益々怪しいし。 隣で黙って見ている憲子に、 「ごめん。憲子、先に帰っててもらって良い?」 と言えば、憲子は心配そうな顔をしつつ、頷いた。 「本当にごめんなさいね。」 それを見ていた志織さんが、申し訳なさそうに謝る。 何の用事かは知らないけど、この人は絶対良い人だ。 この人に会う度に、私は自分を可哀想に思う。 同時に、良心がちくちくと痛む。