「花音。ランチの時間に、話聞くからね!」
有無を言わせぬ、憲子の言葉に、私は力なく頷くしかなかった。
内心、ぶちまけたかった。
だけど、憲子に話したら、終わってしまう気もする。
全部、なくなってしまう気がして、少し怖い。
だけど、他に目の腫れていることを取り繕えるような上手い言い訳は思いつかない。
私は、そんなに器用な人間じゃないのだ。
カタカタと機械的にデータを打ち込んでいても、ミスばかりが目立つ。
おかしいな。
恋愛ってこんなに支障が出てくるものだったっけ。
楽しくて、お菓子みたいに甘くて、ふわふわしていて、仕事とは割り切れる。
そんなものじゃなかったっけ。
こんな、苦しいものだったっけ。
そこまで考えて、はっとする。
―違う。自分は、奴のことは好きじゃない。
よってこれは恋愛ではない。
そう思い込むのに必死になって、またひとつ、ミスをしてしまった。


