不機嫌なアルバトロス

後ろを振り返ることなくズンズンとアパートの階段を上っていると、中堀さんが運転席の窓を開けたらしい音がする。



「またよろしくね?乃々香ちゃん」



優しい声の後に、今度は車が走り去る音が聞こえた。



「ふっ…」



階段の途中で立ち尽くす私の目からは、子供みたいにぼろぼろと大粒の涙が零れ落ちる。



悔しい悔しい悔しい。




…悲しい。




唇を噛み締めた。



冷たい風が、自分の身体に吹き付ける。