不機嫌なアルバトロス

「す、好きでもない人と、できるもの…、なの、かなって…」



さっきからぎゅぅっと握りしめている自分の手にさらに力が籠もった。



「まーね」



すごい勇気を出して訊いたのに、返って来た言葉は変わらずだった。




「恋人のように振舞うのが条件だから、仕方ねぇよ。ほら、それ、今度は忘れんなよ」




そう言うと、彼は私の足元にある紙袋を指差す。



停車したことに気づき、窓の外を見てみると、アパートの前に到着していた。




「…わたし、には」



口の中がカラカラになるほど、緊張しているのがわかる。