「お待たせ」



ぎゅぅっと目を瞑って数分。


外気の寒さを連れて、嘘兄貴が、いや、中堀さんが運転席に戻ってきた。



「送るから、家教えて?」



外が暗くて良かった、と思った。


明るかったなら、私の顔が切なく歪んでいるのが、わかってしまっただろうから。



「…ありがとうございます」



私は平常心を装って、なんとか自分のアパートの住所を伝えた。


もうこのまま家に帰ってあったかいお風呂に入って、今日の記憶なんか隅に追いやりたい衝動にかられる。



なんか、疲れた。