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「帰りは送るから」




食事を終えて、席を立つ時に、嘘兄貴はさりげなく志織さんをエスコートする。




お似合いのカップルの後ろ姿を見ながら、私はひとり、とぼとぼと歩いた。




食事中、大した話はしなかった気がする。




本当のことを言えば、単に聞いてなかっただけのことなんだけど。




会計を済ませて、車に乗り込む時。



当然ながら、助手席は志織さんで。




私は一度も座ったことのない席だ。



と、なんとなく思った。



いや、別にいいんだけど。



慌てて思い直すが、今度はさっきよりも強く、ズキンと胸が痛んだ。