「乃々香ちゃん、て、呼んでもいいのかしら…泣いたの?貴方、化粧室に行かせてあげなかったの?」
私の顔を見て、少しだけ咎めるように、志織さんは嘘兄貴に訊ねた。
「え!…あぁ…運転してたから気づかなかった…乃々香、ごめんな。」
嘘兄貴は慌てたように、私と顔を合わせる。
白々しい。
気づいてたでしょーが。
「…失礼して、今ちょっといって来ても良いですか」
快く頷くふたりに、私は席を立ち、化粧室へと向かう。
「はーぁ。」
大きく溜め息を吐いて、ぼろぼろの自分の顔が映る鏡を見た。
恐ろしい位に、奴の思惑通りに進んで行く様に、志織さんへの同情が募る。


