ここに来る前は

一面に稲穂が広がった景色を

想像していたけど



この地域の稲刈りはすっかり終わり

閑散としたさみしい風景だった



でもその分聡子さんたちは

オフシーズンに入り


連休中は5人で前回行けなかった

県内や隣接県の観光地を案内してくれて

味覚狩りや紅葉狩りを存分に楽しんだ




おばあちゃんは連休初日を除いては

認知症らしき症状が見られず

絶好調だった




そしてあたしたちが地元に戻る日


「待ってれな」と言って

寝室から何かを取ってきた



「これ朝日と弥彦の分だ、使え」



手渡されたのは

あったかい生地の半纏だった


しかもどうやら手縫いのようだ


「おばあちゃん、


あたしたちに作ってくれたの⁈」