青年が旅へでるといった次の日。いつもの公園で、少女は白いリボンを青年に差しだします。



(はいロアのリボンよ)

「ありがとうユシア。しばらくはこの世界ともお別れか……キンモクセイの季節も終わりだな」

(そうね)



キンモクセイの香りは優しくどこか悲しく、二人を包み込みます――そして。



「ユシア」



青年に名前を呼ばれるのが少女は好きでした。そして、次の言葉に瞬きも忘れるくらい、おどろきます。



「オレが、キミの言葉を探すから。だからーー次会う時はキミの言葉をオレにください」



誰も少女に心からよりそう者はいませんでした。いつの間にか少女の中で、言葉を必要としなくなっていったのです。



言葉を失っても、少女はひとりでした。



青年と出会うまでは。