果てしなく遠い愛へ




『…やあ、ボクの愛おしいツインズ。よく来てくれたね。』


凛と透き通る、それでいて不思議な音源を持つ声音。まるで美しいそれは、男とも女とも区別出来ない。


私とアズを待っていたのは、この組織のトップに君臨する主君。
世界の理を一から崩すような傍若無人な私達の絶対的主君。


『おいで。……朋果、愛月。』


逆らえないのではなく、心からの忠誠が私を突き動かす。私が敬愛と忠誠を捧げた主君は、優しくて酷く残酷だ。


肩で揺れる銀髪は前髪が顔の半分を覆っている。けれどそこから覗く銀色の瞳は吸い込まれそうな程魅惑的だ。


髪も瞳も肌も服装も、全てが白に包まれた儚げで美しい存在。
私はきっと、この人を裏切ることは出来ないだろう。


「天様がお一人なんて、珍しい事もあるんだね。小姑はいないのかい?」


茶化すように言った私に、天様はケラケラと奏でるように笑った。隣の愛月は無表情でため息をつく。


『零 Zero には外してもらったんだ。……キミ達四人に、極秘で頼みたい事があるからね。』


四人……?
疑問を口にする前に、扉が開いて見知った顔が二つ現れた。すぐさま愛月の気配が尖り、彼の目が鋭く光る。


思わず顔を歪めたけれど、そこでまた天様が愉快だとばかりに笑う。この人はこうした愉快犯めいた部分を惜しげも無く晒す悪趣味な性格をしている。


「……朋果に愛月じゃん!え、何々?まさか今回はこのメンバーなわけ?やったなっ!!愛月と組むのって久しぶりだよなぁ、つーか飛花世とは初めてじゃね?あ、朋果とは何回かあるよなー!」


「その口塞げ糞餓鬼。」


いつものマシンガントークにいつものように愛月が極寒の視線を向ける。すぐさま黙った彼は馬鹿なのかそうでないのかよく分からない。


まあ、賢い子だとは思うけど。


万奈 Mana は、名前は女みたいだけど派手なオレンジの髪がトレードマークの美青年だ。……見た目はね。


素直で誰からも可愛がられる要素はあるんだけど、口を開けば思ったことを口にする空気が読めない所もある。
でも周りと衝突しないのは、それだけ彼自身が善良であるからなんだけど。


周りと深く関わらない愛月の、数少ない友人といっても言いだろう。
私個人的にも、万奈くんは好きだ。もちろん友情的な意味でね。