無駄に綺麗な顔に、意地悪い笑顔をたたえた奴が見下ろしていた。

あ、さっきの役員様じゃね?
だから女性達は今もぎゃんぎゃん叫んでいるんだ。

やっぱ間近で見ると固まるくらい雰囲気があるな、とか。
さすが騒がれるだけはあるな、とか思ってると。




「?何、俺に惚れちゃった?」



くすくす。
冷笑しながら、そいつは妖艶に笑った。
まるで猫みたいな笑顔だ。

「てめっ…!」

「月ちゃん!」

文句を言おうとした私を、じんたが引っ張り出して救出してくれる。
いつもは人懐こい笑顔を浮かべるじんたは、何故か目の前の男だけには刺すようなぎらぎらした視線を送っていた。

「大丈夫?痛いトコ、ない?」

「え、あ、おう。ありがとな」

とりあえずお礼を言う。
多分あのままだと学園の王子様を腹パンしてた、うん。

役員サマをぎんっとにらむと、とても愉快そうに口角を上げて降参のポーズをとった。

その手には、私のハンカチ。
あ、うけとってねえや。やべえ。


「ハンカチ」

「あんなの、僕が買ってあげるって!関わんないほうがいい、行こ!」

「…ん」

まだにやにや笑っている役員サマに思いっきり「べー!」と舌を出すと、じんたに腕を引っ張られてそのまま校舎へ走り去った。


女子達の非難の視線が痛い。













「新しい玩具見っけ」

そんな声が聞こえたのは、気のせいか。