「じんた、いこ」
どうせ一生関わらない人種―――
「ねえ」
踵を返した私の手が、ぐんっと後ろに引かれる。
「うわ?!」
危ない、こける―――!
ぼすん、っという音と、背中と後頭部に感じる人肌の感覚。
ああ、誰かが受け止めてくれたのか。
じんたかな?
「「「「いやあああああああ!!!!」」」」
劈く女子の悲鳴。とても五月蝿い。
んん?今どんな状況だ、これ。
お?じんたが驚愕の表情を浮かべている。
私の右手を見ると、一回り以上大きくてしなやかな掌が掴んでいた。
ああ、転びかけた要因はこれか。
って…!
じゃあこれじんたの手じゃねえじゃん!
「これ、落としたよ」
艶かしいかすれたようなハスキーボイスが耳元で囁く。
私の鼻先に、ハンカチがひらひらと揺らめいた。
…私物だ。
