腕を掴まれている月花を見て、真っ先にかんじたのは吐きそうなくらいの怒り。
おかしいくらいにイライラした。
なんで、そんな無防備なの。鈍感なの。
たった一度の、軽いキス。
それこそ触れるだけの子供みたいなキス、なのにさ。
なんでこんな、心臓うるさいの。
体があつくて、どうしようもなく恥ずかしくて、まともに月花を見れない。
「やぶ……、ゆき、と」
「…は」
名前で、呼ばれた。
覚えてたのか、俺の名前。いや、それよりなんで名前で急に。
ぎゅっと、右手に。
彼女の、手のひらの暖かさが触れた。
手を握った、月花から?
嘘でしょ、なにしてんのこの子。
