「大事な下僕だから、勝手に触らないで」
ポカンとする私とチャラ男たちをちらりと冷たく見て、
私の、男に掴まれてた、手首の内側に――
そっと、キスをした。
柔らかい感覚と熱が、他人の体温が、ふわりとゆるく触れる。
「…ひぁ…」
変な声が出た。
矢吹の唇はすぐ離れた、けど。
どくんっ。
体中に熱がまわって、心臓あたりがきゅううってなった。
心臓がすごくうるさい。どくんどくん言ってる。
絶対、今顔真っ赤だ。
「や、やぶき…?」
「……行くよ」
すぐ私から顔を逸らした矢吹は、私の手首をつかんで歩き出した。
心臓は、まだまだうるさかった。
