「めんどくさいし。俺、自分のテリトリー荒らされるんの嫌なの。束縛されるだけ無駄だよ、“恋人”ってシステム」
あくびをしながら呆れていった。
「システム、って…」
好きな人同士なら、そんなのないんじゃないのか?
まあ、愛って奴は万人の見解があるようだから否定できんが。
ざわざわと人々のざわめきが聞こえてきた。
あたりは人工的な光で明るくなってる。駅だ。
「じゃ、俺曲がるから」
「ん?あ、そうか。うん、明日な」
呆けた私に、『馬鹿みたい』って笑った矢吹に手を振って、背を向け歩き始めた。
そういや、ハンカチのことすっかり忘れてた。
「そうだ矢吹――」
振り返って言うけど、誰も居ない。
……あれ?どこ行ったアイツ。
「あ」
きょろきょろして、矢吹のパーカのフード頭を見つける。
「んん?」
そいつは、何でか私が今来た道を逆戻りしていた。
え、なんで…。
コンビににでも、よるのかな?
疑問を持ったまま、私は駅のホームへと入っていった。
