下僕お断り!



正門を無言で抜けて、静まり返る道を歩いた。

目の前を矢吹が歩いている。

「えっと、その」

なにか話題を。
ここは無難に、

「か、家族構成とか……!」


そういうと、前を歩く矢吹の肩がぴくりと揺れた。
…無言。

やばい、聞いちゃいけなかったか…?


「ごめん、あの」

「母親と、義父。父親は死んだ」


吐き捨てるように、言った。

特に“母親”のところを、心底嫌そうな声音で。

なにかあったのかな。

そう思ったけど、人の家を詮索するのは気が引けてやめた。
家庭に問題があるんだろう。

きっと矢吹も、そして私も。



しばらく何も言えず、ただ脚と時間だけが進む。
そうして、あの保健室の件を思い出した。

…。

矢吹も男なんだなあって。

「な、彼女とかいるの?」

「はあ?」

顔をしかめた矢吹が振り返る。

うわ、嫌そうな顔。

「いや、なんとなく思った」

「……居ないよ。つか、いるわけないデショ?」

そりゃそうか。
そしたら女遊びなんてできないもんな。