「怪我、したんだ。ばかは風邪引かないっていうけど、怪我はするんだね」

「うっせえ。先生居ないの?」

「うん」

自分でやるしかねえか…。

そんな私を横目に、着衣していく矢吹。
どこ吹く風である。


消毒液と絆創膏を探すけど、なんせ初めてきたようなものだから、全然分からん。

あたふたしていると、

「はー…。見てるこっちがイライラしてくる。座りな」

肩をどん、と叩かれて、強制的に椅子に座らされる。

「なにすんだよ!」

「じっとしててね」


そういって、私の足に触れた。

びっくりしてぴくりと動いてしまう。
なんだか他人の掌の感触は気持ち悪いような変な感じがした。


ひざまずいたまま、矢吹はてきぱきと治療を進めていく。

「なあ」

「ん?」

顔を上げずに答える矢吹。

「えっと、そのー、さっきの女子、は」

「ああ、俺が抱いたよ」

さらりと、すごいことを言いやがった。

「…へー……」

「あっちが処女捨てたいって言ったから仕方なくだよ。俺だってそんなホイホイヤってるわけじゃない」

ペタリ、と絆創膏を張られバチン!と上から叩かれた。

「いって!」

つか、こいつかなり際どいことを真顔で言ったぞ?!
女遊びが酷いってのは本当だったのか。



「何、俺に抱かれて欲しくなった?」


「……!」

上目づかいの矢吹が、艶やかな声でそっと囁いた。
ぞわぞわと背筋があわだつ。なんか、変な、感じ。

「オ、オ断リシマス」

「うわあ、がっちがち。冗談だよ、本気にしちゃったの?」

くすくすとゆかいそうに笑って立ち上がった。
絶対からかわれる……!


「ほら、授業中でしょ。戻りなよ」

「お前もだろ…」

「俺はいーの」

首根っこをつかまれ、引きずって外に放り出された。

…恨むぞ?