「保健室くるの初めてかもー」

無駄に丈夫なからだをしているため、ここにお世話になった記憶はない。
ちょっとわくわくだ。


スライド式のドアに手を伸ばそうとしたら、

「…ありがとうございますっ」

ガラリ、と自動でドアが開いた。

中から小さめの女子生徒が飛び出してくる。
思わず後ずさった。

もっているリボンは赤だから、一年生。

赤く染まった頬と、乱れた髪と制服。

「…あ」

「えっと」

話しかける前に、彼女は脱兎のごとく走り去って行った。


……あれは、あれだな。

いわゆる、あの、情事というか濡れ場のあとと言うか…。
とても気まずい。

「し、失礼しまーす」

先生いないだろうケド、と心の中で付け足しておいた。

中は真っ暗、案の定先生は居ない。
パチリ、と電気をつけてみる。


「……なにしてんの、矢吹」

「こっちのセリフなんだけど」


上半身裸の矢吹が立っていた。

首にはチョーカーが変わらず巻かれていて、白い肌によく映える。
筋肉もついていて、うっすらと腹筋も割れていた。

それにしても細いなこいつ。
ちゃんと食ってんのか?