「ただいまー」
がちゃり、と鍵を開けて家に入る。
辺りはもう真っ暗だけど、家の中も真っ暗だ。
母さんは入院してるし、父さんは仕事の虫だから。
『ただいま』と帰ってこない家に寂しさを感じている、と。
「あ、いたいた月ちゃん。どしたん、寂しいのぉ??」
後ろからじんたに声をかけられた。
私とじんたの家は向かい合わせだ。
だから昔から、一緒に学校へ行ったりお泊りとかさせてもらってる。
「相変わらずうざいな、じんた」
「さりげに酷いね!晩ごはん、一緒に食べよ?今日兄ちゃん友達んちに泊まるって」
「マジ?行くー」
だからこそ昔からじんたに救われてる。
兄貴の事件も、母さんのことも、いっつもそばに居て支えてくれたのは日比谷一家だ。
日比谷家にはたくさんの恩がある。
いつか恩返し、しないと。
少しのセンチメンタルも、じんたの笑顔にかき消された。