「月花ちゃん、これ持っときなさい」
そう言って、私の掌に可愛らしい小さなスプレーを置いた。
なんだこれ、虫除け?香水?
「催涙スプレー。何かあったらこれを顔にプッシュよ!」
「え、えげつねえぜ兄貴…」
「姐さんとよびなさい」
カランカラン、とお客さんが入ってきた。
「まあそういうタイプは、月花ちゃん相手だと振り回そうとして逆に振り回される奴だから」
「そんなもん?」
「そんなもん」
こくり、と神妙な顔で頷く伸太さん。
「アドバイスは…そうね、ぐいぐいいきなさい」
「はあ」
どうも困るアドバイスを貰ってうーんとうなっていると、お客さんにオーダーをよばれたので、マジメにバイトを始めた。
がんばんねえと。
