「で、お礼は?」

「あん?」

「折角助けてあげたのに、お礼の一つもいえないの?馬鹿なの?」

ぐぬぬ。

まあ、助けてくれたのは事実だし。
こいつにお礼を言うのは釈然としないけど…。

「矢吹、あ、ありがと…」

「……」

語尾が自然に小さくなる。

多分口は引きつっていると思う。
心底嫌そうな顔をしているだろう。

「あん?どした」

「いや、お礼を素直にいえるんだって思って」

「お前は私を何だとおもってんの?」

「アホ」

「……私、お前嫌いだわ」

「奇遇。俺もだよ」


がるる、とにらみながら残りの本も戻す。

窓はちゃんと閉めた。


「じゃ、かえっていいよ」

「あ、うん。…矢吹はまだ帰らないのか?」

「うん。書類整理もあるし」

「…ありがとう。じゃあなー」


ひらひらとこっちを見ず手を振る矢吹。


まじめに仕事はするんだな、と思いながら図書室を出た。