あっと言う間に放課後。

ちなみに矢吹はほとんど寝てた。
先生注意しろよ!

とにかく今日は一日中不機嫌だった私。

一度任命されたキョウダイは一学期は解消できないし、そもそも矢吹自体が解任する気はなさそうだ。

リュックに教科書をつめながら隣の席を見る。

すがすがしいほど矢吹は爆睡中。

ああ、でも。

矢吹はとにかく飽きやすいと聞いた。

多分私も、一時のおもちゃなんだ。
どうせすぐ飽きるだろう、こんな面白みのない女。もって一二ヶ月かな。
仕方ねえ、我慢するしか道は…。

こうなったらとことん反抗してやる!

「起立、れーい」

委員長の号令で一日の授業が終わった。

皆がわいわいがやがや騒いで動き出す。

女子の半数は、自席で眠りこける矢吹を見てうっとりとして、それから私を強くにらむ作業を繰り返していた。

わーお理不尽。

こっちのが被害者だってのに納得いかねえ。


「……おい」

女子の視線の的に話しかけるのはきつかったけど。

ごつん、と容赦なく矢吹の頭をはたく。
それだけで女子達から抗議の声があがる。

すごくめんどくさい。

矢吹がむくりと顔を上げる。
あ、ちょっと不機嫌だ。

「…痛いんだけど」

「寝てんのが悪いだろ。仕事、あるんでしょ?私バイトだから、早く終わらせてえんだ」

「あー…月ちゃん、また明日ね~」

「おーう」

じんたが心配そうにしながら教室を出て行く。

多分市ノ川さんのところに行くんだろう。
ずっと言ってたことだから、嬉しそうだ。こっちも嬉しい。

「何余所見してんの?行くよ」

むすっとした矢吹が、当たり前のようにスクバを私に投げ渡して立ち上がった。

「おい、私荷物もちじゃないんだけど」

「下僕ってそんなでしょ?」

「あ、おい、待てって」

恨みがましい女子の視線を背中に受けながら、二人分のかばんを持って矢吹を追いかけた。