―矢吹雪人SIDE―


面白いおもちゃを手に入れた。

四ツ谷月花、同じクラスの女子。

まあ中の上くらいの顔立ちだけど、とにかく中身が残念すぎる。
色恋沙汰や世のゴシップにキョウミは全くなし、人間関係も希薄。


そして、俺の誘いを断った唯一の女子。


高一の秋、俺たちは合コンに行くことになって、観察しようと月花を呼んだ。

もちろん答えはyesだと思って。
そしたら、なんともあっさり

『今日スーパーの特売だから無理』

と断られた。

腹立たしいに決まってる。

だって、俺が誘えばどんな女子でもうなずいたんだ。
それを、特売で断られるなんて屈辱以外のなにものでもない!

妖しげな笑みで、繊細な指使いで、艶やかな声で、耳元で囁けば誰だってイチコロ。

そう自負していた俺が、あんな奴に断られたのがむかついて。


どっか頭の片隅に、“四ツ谷月花”の名前が残っていた。


前期も後期も兄妹は適当に選んだ。

で、なんか選ばれて特別だと勘違いしたあほな女達は、ベタベタと彼女を気取って甘えてきたり擦り寄ったりして。

正直うざかったし気持ち悪かった。

だから、色恋にはキョウミない奴を選ぼうって思って。

それで、登校中に月花を見つけた。


反応は完璧。俺の理想どおり。

なかなか反抗的で俺の用紙にたぶらかされず、物怖じしないで文句を言ってくる。

そんな月花に腹を抱えたくなった。

最終目標は月花で遊びつつ彼女を落とす。


あの日俺の誘いを断ったのを、心底悔しがるまでどろどろに溶かして。

絶対、惚れさせてやるね。覚悟しててよ。

それで、遊びつくしてすぐに捨ててあげる。



月花の泣き縋る顔が見たい。




「…最低だー」

呟く月花に、




「全力でアンタを本気にさせてあげるから」




そっと笑った。