豆粒の悪戯

塾の帰り道は嫌いだ。

行きはいつも細い人通りの少ない路地を通ってくるのだけど、

紘子さんにその道は暗くなると

痴漢等がでて危ないから人が多くて

街灯がついているコスモス通り(商店街の名前)を

通ってくるように言われているのだ。

私なんかを襲う暇なおっさんは珍しいと思うけど、

実際暗くて怖いから帰りのみコスモス通りを通っている。

紘子さんは行きもこちらを通るよう薦めてくれているけれど、

実はあまりここを一人で歩きたくない。

明るく、賑やかな人の声や音楽。

その中を一人で黙って通るのがなんだか街から仲間外れにされたようで辛い。

たまにクラスの女の子数名が遊んでいるところに出くわすともう最悪だった。

向こうは笑顔で私にも遊んでいかないかと薦めてくれるけど、

紘子さんのことを考えると夜遊びが出来るような心情じゃなくなる。

だから、断る。

相手は気にしない顔をするけれど、

心の底で「あいつ一人で寂しい人間だな。」

「なんだよ、付き合いの悪い奴。」

そう思われているような気がしてならない。

いつも周りにクラスの子がいないかキョロキョロしながら歩いてしまう。

だから、今もこうしてちょっと挙動不審な私。