結びの魔法

女の子は照れくさそうに謝った。

「この子も白いなぁ。」

陽はまじまじと白人の観察をしている。


「あんたたち新人?あ、今日来る新入生徒ってあんたらか。」

今度はまじまじと見られるほうに回った。

「真っ黒ね。」

そして見終わったときの顔はひどかった。もう完全に珍しいものを見る顔だ。

「・・・気分悪い・・・。」

陽は小さくつぶやいて先に席についてしまった。僕も気分が悪い。でも・・・。

「陽、『郷に入っては郷に従え』ってよく言うだろ?」

秀がさとしている。でも陽は思いもよらずキョトンとした顔をしている。

「『ごーにはいってわごーにしたがえ』とはなんだ?」

「・・・お前ちゃんと教師の人の話聞いてたか?」

秀があきれた顔をする。それに対して陽はしどろもどろに答える。

「おきてた・・・。うん、おきてた・・・。」

何かを自分に言い聞かせるよう言い方は昔からの陽の癖で、嘘をつく時にこうなる。

「寝てたのか・・・。」

「お、起きてたよ!うん。そう!」

ほらまた言い聞かせた。これでもう確実に陽はあの時寝ていたな。

「陽。ここでは寝ちゃだめだよ?」

「わっかってるよ!ん、わっかてる?わかてっる・・・。」

「・・・。」

「わかってるだ。」

見かねてすかさず秀がフォロー。

「あ、あのー・・・。」

彼女のことをすっかり忘れていた。

「なんか変な事を言ったなら謝るわ。それよりあんたたち名前は?」

乱暴な感じの口調だが、根は優しそうにも見える。

「俺ら三人兄弟なんだ。俺は結城秀だ。でこのわがままなやつは陽。」

礼儀に反してビシッと陽を指差した。

「わがままで悪かったね!」

秀に向かってあっかんべーをした。

「で、僕は要。よろしく。ところで君は誰?」

僕は少し遠慮がちに聞いた。彼女は背筋をただし、凛とした声で答えた。

「私は鈴木洋子。こちらこそよろしくね。」

初めて彼女は素直ににっこり微笑んだ。

「そろそろ時間だわ。暇つぶしをありがとうね。」

「え?」