「置いてくぞー!」

先に行った二人が僕を呼んでいる。そして係人に頭をパシッと叩かれた。

「「いたっ!何すんですか!?」」

二人は同時に不満の声を上げた。

「日本のルールで空港及び店などの建造物内では大声を出さない。はしたないぞ!子供

かお前らは。」

鋭い目で二人はにらまれる。蛇ににらまれた蛙のように陽は動けなくなってしまう。

「高梨さん(係人の名前)もさっき叫んでましたよ?それに叫びまくっている子供なんて

そこらじゅうにいるじゃないですか。僕ら以上にね。」

秀が叩かれた恨みで揚げ足を取る。

「う、うぐ・・・。」

それに対して係人さんこと高梨雄二さんは言葉に詰まってしまった。普段はしっかり者

の秀が命の瀬戸際で習った毒舌、口先は今も健在だ。たぶん平和ボケしている大半の日

本人は軽く言いくるめられるに違いない。

「もういい、いくぞ・・・。」

そう言って少しすねたようにそっぽを向いてしまった。たぶん今ので完全に嫌われてし

まっただろう。でも嫌われるのには慣れている・・・。

「・・・行こう。気にすることは無いさ。」

「え、あ・・・うん。そうだな・・・。」

二人の恐ろしい戦いを真近で見てしまった僕らはもはや口を挟めなくなっていた。それ

からというもの目的地の養成所に着くまでの1時間ほどは誰も口をきかない、きけない

気まずい空気が立ち込めた。

到着した頃には陽がヘロヘロになっていた。車によってしまったらしい。

「大丈夫か?」

僕は優しく聞いてみる。

「だ、だいひょうぶだよ、兄ィ・・・。うえっ・・・。」

陽にとって僕は憧れのお兄様らしい。僕が心配すると意地を張って、やせ我慢をし始め

る。昔から子ども扱いされるのが大嫌いで、ツンツンしてきた。でも内心は以外に・・・。

「うう・・・、トィレどこぉ、兄ィ・・・。・・・いっしょに来てくれ・・・。」

以外に寂しがりだったりもするのだ。

「ハイハイ。ごめん秀、少し待ってて。」

「ああ。」