「兄ィの背中を流させてほしいかなぁ・・・なんてね・・・。だめ・・・?」

やっと用件がいえた陽は、なるようになれ的な顔をする。

「別に良いよ?風呂なんて無かったもんな。そういう夢もいいと思うよ。」

同い年ながら弟のような陽がかわいくて僕はついつい許してしまう。そんな様子を密か

に待っていた秀が見ていた。

「このバカどもがっ。さっさと入るぞ!」

秀は痺れが切れて夜叉般若のごとく怒った。

「じ、自分が話の輪に入れないからって八つ当たりするなよ!」

「う・・・。」

どうやら図星だったらしい。僕らの暴走を止めていると思わせておいて、実は話の輪に

自然に加わろうと試みていたのだ。

「僕らいつもこうやって時間を無駄にしてるよね・・・。」

僕は率直な意見を言った。照れていた秀は今度こそさっさと先に行ってしまったし、陽

は上機嫌で話を聞いていない。だから僕の質問に答えてくれる人はいなかった。その

後、秀も巻き込んで背中を流し合った。水がもったいなくて節約して使ったりした。そ

れはとても楽しく暖かな時間だったと思う。

風呂から出ると布の外にはいい匂いが立ち込めていた。おいしそうないい匂いが。

近くの大きな部屋を見ると、机の上に粗食な晩御飯が置いてあった。もちろん僕らには

とんでもなく豪華な食事だ。豚、鶏肉は高級肉、牛肉は貴族しか食べられない超最高級

宮廷料理、神様の食べ物と言っても過言ではないのが僕らの常識、世界だ。今日の夕飯

には一人一本ささみのフライが出ていた。そして冷めかけたご飯、野菜、みかん(半分)

が出ている。

「お腹減ったね・・・。あの高級な食材、誰のだろね。」

よだれをたらさんばかりに陽が見つめていたときだった。思いがけず後ろから声がし

た。

「それは君らの夕飯さ。」

三人同時に振り向くと、そこには先生が立っていた。

「お腹がすいているだろう。さあ、席に着きなさい。」

先生に促されて僕達は席に着く。もう・・・我慢が限界だ。

「では少し早いですがいただきましょう。手を合わせて、いただきまーす!!」

皆は普通に食べ始めた。しかし僕らは困ったことになっていた。