この町に、あたしすっごく馴染んでるよ。ユウトを思い出す度、あたしは見えないキミに伝える。
 「夕日ー!おはよっ!」
 この声は、池本 早奈。あたしの親友がやってきた。
「遅い!電車乗り遅れるよー!」
 あたしは、桜木 夕日。中学2年生。私立に通っているから、次の電車を逃せば、そこで遅刻確定。
 ちなみに、゙夕日゛って名前は、オレンジ色の夕焼け空の時間に生まれたのと、温かい人になってほしいって、お母さんが付けてくれた。
 「夕日!もうダメだよ・・・。ごめん!ほんっとにごめん!あと2分だよ。」
 「うっそー!間に合わないじゃん!」
 あと5分あれば、間に合うのにっ!
 「おはよう」
 妙にませた、高い声。
「「美優!ちょうど良かった!乗せてー!」」
  三島 美優。いつも、お父さんの車で登校している、プチセレブ。
 「いいよ、間に合わなさそうだし」
 美優は白い歯を見せて笑うと、あたしたちを乗せてくれた。
「ところで、明日はテストだけど、大丈夫?」
 美優があたしたちに尋ねる。
「「忘れてた!」」
 あたしたちは、参考書を取り出す。美優のお父さんは、あたしたちの慌てぶりを見てクスッと笑っていた。
 そう、そうだよ。明日はテストだよ。あたし、とっくに忘れてた。
 エスカレーター式の学校だから、毎回そこそこの成績を取っとかなきゃなんだよね。